マクロファージについて
マクロファージ研究分野
共同研究題目
環状乳酸の CD163 を指標としたマクロファージ活性化作用の検討
研究目的および内容
マクロファージの活性化に対する環状乳酸の作用を CD163 を指標と した Cell-ELISA 法にて評価する。
研究期間
平成26年6月1日〜平成27年3月31日
研究担当者
熊本大学大学院生命科学研究部細胞病理学分野・講師・藤原章雄
研究結果概要
マクロファージは体内の老廃物の処理や、病原菌に対する防御機能を担っている。
その一方で、過剰なマクロファージの活性化は、逆に多くの疾患の発症に関わることも知られている。
近年、マクロファージの活性化機構には、古典的活性化経路とオルタナティブ活性化経路が存在することが知られている(図1)。
すなわち Th1 タイプのサイトカインでの刺激により炎症惹起性に機能する古典活性化マクロファージ(M1 マクロファージ)と、Th2 タイプのサイトカイン刺激により抗炎症性、組織修復性に機能するオルタナティブ活性化マクロファージ(M2 マクロファージ)の2種類に大別されている。
このようなマクロファージの活性化の違いは、様々な病態形成と深く関連するため、マクロファージの活性化制御が疾病の予防や治療に有効であると考えられている。

腫瘍組織においては、M2 マクロファージが腫瘍血管の形成促進や IL-10、PGE2 等の 免疫抑制分子を産生することで抗腫瘍免疫の抑制に関与している。
一方、M1 マクロフ ァージは、抗腫瘍免疫を活性化することで腫瘍の増殖を抑制することが知られている。
例えば、IL-4、IL-13、STAT3/6 を欠損したマウスでは、腫瘍組織での M2 マクロファー ジへの分化が抑制され、M1 マクロファージの割合が増えるため、結果的に癌の発育・転移が抑制されると報告されている。
つまり、M2 マクロファージは抗腫瘍免疫を抑制することで腫瘍増殖に関与しており、一方、M1 マクロファージは抗腫瘍免疫を活性化することで、腫瘍の増殖を抑制することが知られている。
ゆえに、腫瘍内浸潤マクロフ ァージの活性化状態を M2 から M1 に変換することができれば癌の予防や治療につながると考えられている。
そこで、我々はマクロファージの活性化制御を癌に対する予防・治療戦略として位置づけ、CPLのマクロファージの活性化に対する作用を検討した。
まず、CPLのヒト単球由来マクロファージにおけるCD163(M2 マクロファージの細胞 表面マーカー)の発現に対する作用を検討した。
方法としては、IL-10 で刺激することでCD163の発現が増加する条件下においてCPLのCD163発現に対する作用をCell-ELISA法にて評価した。
その結果、CPLはコントロールと比較して M2 マクロファージの細胞表面マーカーである CD163 の発現を抑制した(図2)。

次に、CPL のヒト単球由来マクロファージにおける IL-12(M1 マーカーサイトカイン)の発現に対する作用を検討した。
方法としては、ガン細胞の培養上清で刺激することで IL-12 の分泌が減少する条件下において CPL の IL-12 分泌に対する作用を ELISA 法にて評価した。
その結果、CPL はコントロールと比較して M1 マーカーサイトカイン である IL-12 の分泌を増加した(図 3)。
しかしながら、本検討については試験回数が少ないため再現性の確認が必要と考えている。

以上、結果をまとめると、CPL はマクロファージの活性化を M2 から M1 にシフトさ せる作用を有する可能性が考えられるため、癌の予防・治療に有効である可能性が示唆される。